たかが年代、されど年代 5つの年代別支持のパターンから見えてくるもの①

日々変化する小売りの現場において、複雑な解析は歓迎されない。そこで、シンプルで実践的な分析手法が実は多くの知見を生み出している。分析の主となるのはPOS分析、ID-POS分析だ。ID-POS分析では、一般的な食品スーパーで取り扱うポイントカードに紐付いた顧客の属性である住所、性別、年齢と購買情報(何が、いつ、どれくらい、いくらで売れたのか)から分析を行う。その際にキーとなる属性は、やはり年代である。今回は年代をキーにしたID-POS分析から得られる知見について紹介する。

"たかが年代、されど年代 5つの年代別支持のパターンから見えてくるもの①" table of contents

  1. たかが年代、されど年代 5つの年代別支持のパターンから見えてくるもの①
  2. カテゴリーの傾向に相反する単品が示唆するもの
  3. 事例は少ないものの、外せない2つの分類型

年代をキーにしたシンプルな分析手法が多くの知見を生み出す

映画館で聴く音声は、前後左右からのさまざまな効果音に溢れ、その迫力は増す一方である。今では一般家庭でも専用のアンプを使えばそれに近い音声を楽しむことが出来るが、その基本は5.1チャンネル(※注①)と呼ばれるサラウンド音響である。最近では9.1チャンネルの音声を複数のスピーカーで鳴らすものまで現れたが、スピーカーをただ増やせばよいというものではないらしい。事実、スピーカーの数が増えれば、その音質は悪化する。複数になるほど、スピーカー間のバランスを取ることが難しくなるからだ。データ分析におけるパターン化も同様である。さまざまなパターンを作って、ぬけ洩れを少しでも防ぎたくなるものだが、複雑なパターン化は、その数だけ分析に労力を要し、同数の打ち手が求められる。小売りの現場において、複雑な解析は歓迎されないものだ。以前にもその一部を紹介させていただいた、年代をキーにした分析手法は、その点を考慮したシンプルなものであった。顧客の年代別の購買特性を、わずか5つのパターンに分類するだけのものだからだ。しかしそこから得られた知見は数多くある。その手法の詳細と、得られた知見の一部を、今回と次回にわたり紹介してみたい。

※注①5.1チャンネル:6つのスピーカーを配置し、サラウンド音響を楽しむオーディオシステムのこと。5つのスピーカーに加えて、重低音専用のスピーカーをひとつ配置するが、それを0.1と数えるため、5.1チャンネルと呼ばれている。

 

年代は分析の最も重要なファクターとなる

一般的な食品スーパーで取り扱うポイントカードに紐付いた顧客の属性は、住所、性別、年齢くらいである。住宅の区分や年収などはもちろん、家族構成すら不明である。入会を勧める際、出来る限り記入する項目を減らすことで、入会時のハードルを低くする狙いがあるからだ。だからといって、活用の価値が薄れるわけではない。個人の購買実態を把握することで、さまざまな購買傾向を見出すことが出来る。それにより、チャンスロスの削減や、未だ気付かない潜在需要の掘り起こし、更には、取りこぼしている需要の発見につなげることが出来る。その際にキーとなる属性は、やはり年代である。この年代をキーに、5つのパターンに0.1(0.1については後述する)を加えて「5.1分類」と名付けた分析手法の構築に至ったのである。その基本となる5つのパターンについて説明する前に、まず算出のロジックについて触れておきたい。年代別の支持の割合を分析する際、単純に年代毎の購買者数を比較するだけでは、偏った結果になる。店毎に年代別のお客の割合そのものが異なっているため、それに左右されるからだ。そこでまず調査する店の全体の稼働顧客(調査期間に何らかの購買のあった購買者)の年代別割合を算出し、次に調査する商品の購買者の年代別割合を算出する。その割合を比較すれば、店の稼働顧客の年代別の割合に左右されることなく、年代別の支持の高低を判断することが出来る。

図表①:年代別の稼動顧客の割合と購買者の割合比較(%)
商品(キリングリーンラベル350ml缶) (1)稼動顧客の構成比 (2)商品購買者の構成比 (3)比率     (②÷①×100)
20歳~ 1.8 1.3 69.8
25歳~ 3.6 6.2 171.2
30歳~ 6.1 11.3 187.3
35歳~ 8.3 13.6 164.1
40歳~ 10.8 14.1 131.1
45歳~ 11.7 13.0 111.1
50歳~ 11.5 10.8 93.7
55歳~ 9.9 8.9 90.6
60歳~ 9.8 7.5 76.7
65歳~ 11.1 6.4 57.4
70歳~ 8.7 4.2 48.2
75歳~ 6.7 2.6 39.3

図表①に、実際のビールの事例を掲載しているので、違いを確認していただきたい。それを図表②のようなグラフにすればそれは更に鮮明になる。

図表②:図表①の(1)と(3)の項目をグラフ化-グリーンラベル350ml、500ml缶(%)

図表②のAは、キリンのグリーンラベル(350ml、500ml缶)の、年代別の購買顧客の割合を単純に示したものである。これで見ると、最も割合が高いのは、35歳~50歳未満までとなっている。ところが稼働顧客の割合を100として、購買顧客の割合をその比率で表した図表②のB(5.1分類)では、25歳~35歳未満の割合が最も高く、若い層の支持が極めて高い商品となっていることがわかる。昨今指摘されることが多い若者のビール離れとは、およそかけ離れた結果が見えてきたのである。

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  2. カテゴリーの傾向に相反する単品が示唆するもの
  3. 事例は少ないものの、外せない2つの分類型