ワインの売り場を科学する

近年、スーパーマーケットでもワインの売り場が拡大し続けている。分析すると、ワインの購買行動には興味深い特徴があった。今回は、ワインの売り場を科学すると題して、スーパーマーケットにおけるワインについて、分析・考察する。

"ワインの売り場を科学する" table of contents

  1. ワインの売り場を科学する
  2.  一途な心と浮気心、両方を兼ね備えた?ワイン党
  3. ワインとチーズは相思相愛ではなかった?
  4. ワインに合う和惣菜の開発のキーはシニア

売り場を分析 日本酒党は一途想い、ワイン党は浮気者?

サミットは、その一号店である野沢店(東京都世田谷区野沢)を移転増床し、2013年の11月末に野沢流雲寺店としてオープンさせた。1階と地下1階の2層からなる新店舗だが、1階入り口を入ってすぐに目を惹くのは、併設された惣菜とワインの売り場だ。ヤオコーを代表とする惣菜とワインの融合を図った売り場配置は、各小売りが競って取り組んでおり、もはやそれだけで驚くことはなくなったが、野沢龍雲寺店におけるワイン売り場には、品名カードに少し面白い工夫がある。ワインの特徴を記した訴求を品名カードに示すことはどこのスーパーでもそれなりにされているが、野沢龍雲寺店では、それとは別途に、ワンフレーズで表現した訴求ポイントを、定番に陳列されたすべてのワインの品名カードの『見出し』として大きく訴求しているのだ。例えばあるワインには、『ナポレオンが愛したワインである』とか、またあるワインには、『パーカーポイントが89点のワインである』とか、そんな短いキャッチフレーズである。

更に詳しい説明は、カードの中ほどに記載されている。顧客が細かい訴求をいちいち読まなくても、最初に売り場を一瞥すれば、およその特徴を知ることが出来るように工夫されているのだ。考えてみると、ワイン以外のお酒で、ここまで訴求に工夫を凝らすことはない。何故ワインは特別なのか。ワインには色々な銘柄があり、詳しい知識を持った人が依然少数派で、商品を選ぶ際のちょっとした情報がキーになることは確かである。しかし銘柄の多さは日本酒にも当てはまるはずだ。

そこで図表①を見ていただきたい。

図表①-1 日本酒購買ベスト50人と輸入ワイン購買ベスト50人の比較
図表①-2 日本酒購買ベスト50人と輸入ワイン購買ベスト50人の比較

 

某小売りチェーンにおける輸入ワインと日本酒の半年間での購買ベスト顧客50名がそれぞれに購買した銘柄(商品)数を表わしているグラフである。

これを見ると、平均値と中央値(※注①)、いずれもワインは日本酒と比較して2倍半以上も銘柄数が多いことがわかる。平均値が中央値を大きく上回っているのは、ワインの購買ベスト50名中、10銘柄以上、最大で48銘柄まで、複数の銘柄を購買している会員が多く存在していることに起因している。決まった銘柄を繰り返し購買する傾向が強い日本酒に対して、ワインの場合は、いわゆるバラエティシーキング(※注②)の傾向が強いということが言えそうだ。毎回異なった銘柄を求める顧客が多くを占めている、それを伺わせるに充分なデータである。このデータを基に、小売り側が対応すべきことは何か。おすすめ商品、スポット商品を短いサイクルで展開し、顧客の目線を変えることで、飽きの来ない売り場を作ることであり、顧客がワインを選ぶ際に、購買の動機付けになるような情報を少しでも多く、シンプルに示すことだろう。そう言った意味で、サミット野沢龍雲寺店でのワインの品名カードのワンポイント訴求のやり方は、そのキャッチフレーズの気が利いていて的を射たものである限り、新たな試みとしての効果が期待出来そうである。

※注① 中央値
数値データの中央に位置する値。数値データの最大値に顕著に高い数値データがあった場合でも、平均値のような影響を受けない利点がある。

※注② バラエティシーキング
特定のブランドだけではなく、さまざまなブランドを購入しようとする消費者の購買特性のことで、特定ブランドにこだわりを示すブランドコミットメントとの対極にある概念

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  1. ワインの売り場を科学する
  2.  一途な心と浮気心、両方を兼ね備えた?ワイン党
  3. ワインとチーズは相思相愛ではなかった?
  4. ワインに合う和惣菜の開発のキーはシニア