肉好きシニアの実態を探る

近年、肉類をよく食べている高齢者の方が長生きとの指摘を目にすることが多い。肉類を好むシニアも増えているという。肉好きシニアをテーマに、肉類を好むシニアの購買実態を明らかにするとともに、多様化する生活パターンのシニアをターゲットとした畜産部門のあり方について考えてみたい。

"肉好きシニアの実態を探る" table of contents

  1. 肉好きシニアの実態を探る
  2. 平日は売れない商品、誰がそれを判断するのか?
  3. ある年代を境に逆転する水産部門、畜産部門の購買率

食品スーパーにおける高齢者の肉類の購買の実態

なまこを世界で最初に食べた人は勇気がある。そう思っている人は少なくないだろう。ところがある本に、人間は古来、口に出来るものは全て食べていて、進化と共に、危険なもの、不味いものを次第に口にしなくなっていった、ということが記されていた。つまり最初に食べたという発想ではなく、なまこは珍味ゆえに、最後まで残ったと考える方が正しいらしいのである。

また、次のような話も本で読んだ記憶がある。元来人間というものは、その体力に合わせて捕らえられるものだけを食してきた。若い頃は獣を追いかけて捕らえる力があるため肉類を中心に食べ、年を取ってくると、体力の衰えから、川で魚を捕って食べていた。年齢に応じて、自然と肉類から魚類へと食事の変化が起こっていたのだという話である。冒頭の話同様に、どちらもなるほどと思って感心して読んでいたものだが、前者の話と違って、後者は、現状では、説得力に乏しいと言わざるをえないだろう。高齢者ほど肉類を好み、また実際に肉類をよく食べている高齢者の方が長生きとの指摘を目にすることが多いからだ。それが真実であれば、食品スーパーにおける高齢者の肉類の購買の実態を、さまざまな角度から検証してみる必要がありそうである。高齢になれば、当然、生活のパターンも変わって来るはずで、仕事や子供に左右されなくなる分、平日と土日の過ごし方も多様化するだろう。そんなシニアが今後増え続けることが明白な事実となっているにもかかわらず、十数年前の発想から抜け切れない品揃え、商品作りの食品スーパーが、まだまだ多いのではないだろうか。畜産部門におけるこだわりの食材が、未だ土日祝にしか、売り場に並ばないスーパーなどはその一例だろう。そこで今回は、肉類を好むシニアの購買実態を明らかにすることで、シニアを睨んだ畜産部門の商売のあり方について考えてみたい。

シニアが好み購買頻度が圧倒的に高い商品とは…

ここ最近スーパーでも目にすることが増えてきたのはエイジングビーフ(熟成牛肉)である。まだまだ畜産に占める割合は極めて低いものだが、霜降りではなく、赤身の肉の旨味を、より引き出すという点から、肉好きの高齢者の関心は高いようである。

図表①エイジングビーフ すきやき用薄切り少容量パックの購買者年代別構成比
(上段 トライアル、下段 リピート)

図表①は、あるチェーンストアにおいて、そこで取り扱うエイジングビーフで最も売れている人気商品のすきやき用薄切り肉を事例に、その半期におけるトライアル、リピートの割合を示したものである。これを見ると、トライアルにおいて、約半分近くを占めているのは、60代以上のシニアであることがわかる。更にリピーターにおいては、その割合が、実に6割以上に及んでいるのだ。70代のリピーターだけでも、40代、50代を合せた割合とほぼ同じなのである。上質なもので、体にやさしいもの、それを少量でという、シニアの3つのキーワードを充足している商品が、このエイジングビーフである。同様に、その3つのキーワードを満たした別の人気商品の全購買者の購買頻度と年代の分布を、マトリクスで捉えてみたものが図表②である。

図表②ヒレステーキSサイズパック、3,431名の購買頻度

この商品は、半期で1万パック以上販売する黒毛和牛ヒレステーキの少容量パックである。図表の縦列は購買頻度、横列は年代である。右肩上がりの分布となっていることは、ひと目見れば明らかだろう。最も高い購買頻度は、8日に1回で、3名のお客が存在しているが、年代は、いずれも65歳以上で、75歳以上も1名いることが示されている。11日から13日に1回のヘビーユーザーも、ほぼ70代で占められている。仮に月に2回以上の購買があるお客(16日に1回以上の購買頻度のお客)を、ヘビーユーザーとして捉えれば、ヘビーユーザーの全てがシニアであることになる(図表②の黄色破線で囲まれた部分)。もともと熟成牛肉を含め、高額の肉の場合、ゆとりのあるシニアの購買の割合は高くなる。それは事実だが、購買頻度の高いシニアが、多数存在していることを、実際にデータで目の当たりにすると、現状の肉好きシニアへの対応のあり方が適切か否かを、改めて意識せざるを得ないのではないか。特に、時間帯別、曜日別の品揃えについての抜本的な見直しは、次に紹介する事例からも、急務と言えそうである。

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  1. 肉好きシニアの実態を探る
  2. 平日は売れない商品、誰がそれを判断するのか?
  3. ある年代を境に逆転する水産部門、畜産部門の購買率