隣の芝生は青く見えない?「購買率」が示す店の実力

今回は、購買率だ。購買率と店における潜在需要の取りこぼしの実態について、データから推し量ってみたい。また、購買率の特性、活用の仕方について、実際の事例を挙げながら説明する。

"隣の芝生は青く見えない?「購買率」が示す店の実力" table of contents

  1. 隣の芝生は青く見えない?「購買率」が示す店の実力
  2. 一番のプライオリティは、来店しているお客への対応
  3. 購買率を改装の評価に活用する

隣の芝生は青く見えないと考える心のメカニズムの方が正しい

心理学の世界で有名な理論のひとつに、フェスティンガーの認知的不協和の理論というものがある。例えば酒好きな人に、酒は体に毒だという医学的見解を示したとする。その場合、酒が止められない人は、酒が体に良いという別の意見を探し出し、それを持って自分に不利な事実を否定したり、無視したりする。ある事実に関して、自分が下した判断に誤りがある、と思えるような新たな事実が出てきた際、それを覆すことが出来ないとしたら、その心の矛盾を解消する必要がある。つまり心理学的には、隣の芝生は青く見えない、と考える心のメカニズムの方が正しいらしいのである。ところが小売りにおいては、それに従事する多くの人が、隣の芝生を青いと思って疑わないケースがある。それは何か。店における商圏の潜在需要の捉え方である。何故なら、足元の潜在需要でさえ、充分に取り込んでいないにもかかわらず、足元以外のところからの集客に目がいきがちだからだ。ここで言う足元とは、すでに来店のあるお客のことを指している。隣の芝生を見る前に、まず自店の芝生、つまり今来店しているお客にもっと目を向けるべきなのだが、中々そうはならないようである。

そこで今回は、店における足元の潜在需要の取りこぼしの実態が、どれほどのものであるかを推し量るデータについて紹介してみたい。購買率と呼ばれるものがそれである。その特性、活用の仕方について、実際の事例を挙げながら説明してみたい。

店の顧客の構造を、モデル化すると…

言うまでもないことだが、来店しているお客の全てが、ひとつの店だけで商品を購入しているわけではない。色々な店での買い回りの合計が、個人の家計消費になるわけである(ここでは、7万円を食品の家計消費とする)。したがって、特定の店での購買金額が7万円に近いお客ほど、買いまわりが少ないということが言える。

図表①店の顧客構造モデル

図表①は、自店と競合店のお客の構造をイメージしてモデル化したものである。お客を月間の購買金額で6つの層に分け、横軸の上段の棒グラフでそれを示し、下段において、該当する客数の構成比を示したものである。月間の購買実績が、7万円以上に該当する層を、上限のグループSとして左端に置いた。つまりこのSは、ほぼその店のみで、購買のすべてがあるお客というわけである。このS層の構成比は、およそ2%程度しかない。少なすぎる印象を受けるかも知れないが、地域に複数店舗、さまざまな業態の店があり、加えて生協やネットの台頭で、購買のチャネルが広がる一方であることを鑑みれば、意外な数値とも言えないだろう。この構造は、競合店においても同様であり、図表の両端になるほど、1店舗で購買している金額が多くなる。それぞれの店の固定層であり、逆に中央は浮動層となる。それをもう少し詳しく見てみよう。もし仮に、この図表①のように商圏内に2店舗しかないとすれば、例えば事例1では、自店のA層のお客は、競合店のC´層のお客の中にも含まれる買い回りのお客ということになる。何故なら、その二つの購買金額を合わせて月間の消費支出である7万円に達するからである。この場合、自店を中心に買い物をしていて、一部商品(群)を、競合点で購買している買い回りのお客と考えることができる。一方、事例2では、自店C層のお客は、同様の理由から、競合店のA´層にも含まれるお客となり、競合店を中心に、自店で一部商品(群)を購買している買い回りのお客と考えることが出来る。説明をわかりやくするために、2店舗での二者択一としたが、現実には複数店舗において、同様の買い回りが起こっていることがその実態であるはずだ。

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  2. 一番のプライオリティは、来店しているお客への対応
  3. 購買率を改装の評価に活用する