60代シニアが支える30代の子育てママ?食品スーパーは子育て支援を目指せ

孫という存在を目の前にすると、つい財布の紐が緩んでしまうのが祖父母ではないだろうか。ベビー、幼児用の商品におけるシニア層の購買実態が、それを物語っている代表といえる。子供を育てる若い女性だけではなく、それを支えるシニア層の動向にも着目していきたい。

"60代シニアが支える30代の子育てママ?食品スーパーは子育て支援を目指せ" table of contents

  1. 60代シニアが支える30代の子育てママ?食品スーパーは子育て支援を目指せ
  2. ベビーフードの年代別支持曲線には2つの山ができる
  3. 30代と60代の比較から見えてくるもの
  4. 孫に弱いシニアの財布の紐はやはり弱かった?
  5. 食で子育て支援することを標榜する食品スーパーがあってもいい

 

 

 

 

 

谷崎潤一郎は細雪の中で、男性の作家が書いたとは想像しがたいほど、4人の女性の複雑な心の機微を巧みに描き分けた。日本を代表する文豪ならではの手腕にはただ舌を巻くしかないが、現代の女流作家金原ひとみの「マザーズ」(新潮社)は、いかに文豪と言えども、男性作家には立ち入ることができない「母なる性」を描いた小説である。そこには、出産する女という性が持つ複雑な心の深層が、敢えてタブーにも切り込んで赤裸々に描き出されている。初産の母親の新しい命と対峙する際のさまざまな葛藤が、子供への愛情と同時に憎悪へと変貌していく様は読んでいて身震いするほどだが、そんな母なる女性の心理とは裏腹に、ただ可愛いだけの感情で接することができるのは、祖父母にとっての孫という存在だろう。財布の緩み具合が読み取れるような顧客データもいくつか存在する。ベビー、幼児用の商品におけるシニア層の購買実態はその代表と言えるだろう。赤ちゃんを育てる若い女性だけでなく、孫のために購買をするシニア層の存在は無視できないほど大きいのである。今回はその双方の購買実態に着目し、その商売のあり方、更には可能性についてデータを基に考えてみたい。

安心、安全、少量のキーワードから連想する年代は?

まずは図表①から③を見ていただきたい。ここに掲載されているものは、生鮮3部門別のあるカテゴリーをキーにした同時購買商品である。リフト値と同時購買数の相乗積(注1)から降順にランキングされている。これらの商品から想像されるのは、どんな購買層だろうか。

図表①は畜産部門対象の同時購買商品である。銘柄鳥で大半が占められており、ささみや鳥の挽肉が目立っている。パックのサイズも少量、極少量のものが大半である。牛、豚はほとんど出てきていない。図表②の水産部門では、しらすが上位に集中してランクインしていることがわかる。図表③の青果部門では、上位で目につくものは有機栽培の商品である。これらの商品から、柔らかい(ささみ、しらす)、安心、安全(銘柄、有機)、少量(小、極小サイズパック)などのキーワードが思い浮かぶが、それはシニア層の購買を連想させるものである。しかし実際は、ベビーフードをキーにした同時購買商品なのである。従って、その購買層は30代の女性が中心となっている。赤ちゃんに与えることを想定すれば、前述のキーワードは頷けるものとなる。

図表①畜産部門同時購買
図表②水産部門同時購買
図表③青果部門同時購買

 

ベビーフードの購買が頻繁であれば、赤ちゃんを育てている若いママとほぼ断定できる。そこで、30代の女性でベビーフードのヘビーユーザー約200名の各品群別購買数上位商品から、明らかに全体と異なる商品を抜き出してみた。紙面の制約上、それぞれの図表を掲載できないため、以下に商品名のみをいくつか列挙してみる。

うずらの玉子の水煮、無調整豆乳、無塩うどん、ひきわり納豆、絹豆腐、玉子豆腐などである。赤ちゃんの離乳食については、出生後5ヶ月目から、最長2年にわたる離乳食対象の4期間において、赤ちゃんに食べさせて問題がないと思われる食材の品群毎一覧が、ネットなどに掲載されている。前述した商品は、正にそこで離乳食として推奨されているものが大半を占めているのである。

例えば、鶏卵は、離乳食の後期に適する食材だがうずらは初期から大丈夫とか、豆乳は糖、塩分、乳化剤等の添加がない無調整のものを飲ませるとかいった具合である。新米ママへの教科書と言える内容だが、同時購買の図表①、②の鳥のささみやしらすなども、早い段階から赤ちゃんの離乳食として与えても問題ない食材としてそこで推奨されている。

これらの商品は、もちろん赤ちゃん専用というわけではない。赤ちゃんに与えることが推奨される商品は、同時に安心、安全、食品添加物や過剰な成分(塩分や糖分など)を含まないものであり、健康志向と合致するということである。安心、安全、健康といったキーワードを最も意識する世代が、第1子が誕生したくらいの30代の主婦だとしたら、シニア対応を進めることは同時に子育て世代へのニーズに応えることにつながる可能性が高いということを、まずは押さえておきたい。またデータからのグルーピングは困難だが、ベビーフードに頼らず全てを素材から調理する主婦は、安心・安全・健康への意識はより強いはずである。

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  1. 60代シニアが支える30代の子育てママ?食品スーパーは子育て支援を目指せ
  2. ベビーフードの年代別支持曲線には2つの山ができる
  3. 30代と60代の比較から見えてくるもの
  4. 孫に弱いシニアの財布の紐はやはり弱かった?
  5. 食で子育て支援することを標榜する食品スーパーがあってもいい