糖質制限と小容量商品の売上動向分析 顧客満足度を高める戦略とは

糖質制限商品や小容量商品の売上動向に悩んでいませんか?これらの商品は、購買頻度が高いにも関わらず、売上数が伸び悩んでいるという問題を抱えています。なぜこの傾向が見られるのか理解し、効果的な商品戦略を構築しましょう。

健康志向と小容量商品の売上動向

購買頻度が高い商品について、ご紹介します。1つは、健康志向を謳う糖質制限の商品であり、もう1つは、前述した極小容量の135mlと小容量の250mlの商品です。

図表④  売数と1人当たり購買頻度の上位20品目の比較

図表④(データはビール)には、売上数(左側)と1人当たり購買頻度(右側)でランキングした上位20品目が示されていますが、左右のランキング品目の違いは明らかです。売上数においては、糖質制限タイプと小容量商品で5品目がランクインしており少なめですが、購買頻度では、その両タイプの商品がベスト3を含め、大半を占めています。

品揃えの少なさが顧客選択に与える影響

このような実態が示唆していることは何でしょうか。糖質制限(最近は種類も増えていますが)、あるいは小容量商品のいずれも、その選択肢は限られています。したがって、1人当たりで見た場合、繰り返し同じ商品を利用する傾向が高くなっても不思議ではありません。とりわけ250ml、135ml缶は品揃えが極めて少ないです。もっと品揃えが増えれば、選択肢が増えることで、結果的に商品別の購買頻度は下がることになっても、顧客満足度は上がる可能性が高いです。増えるシニアを考慮すれば、前述したようにここでも、小容量缶に対する認識を改めることが求められるでしょう。

糖質制限商品の市場拡大と課題

ちなみに糖質制限商品の場合、ビールのそれは新ジャンルに比べて品揃えが少ないです(商品化が一部メーカーに限られているからです)。したがって、ビールと新ジャンルの糖質制限商品に限った売上数の割合を、糖質制限ビールのヘビーユーザーと同新ジャンルヘビーユーザーで比較すると(図表⑤)、前者が2割程度の新ジャンルの糖質制限商品の購買がある一方で、後者では、ビールの糖質制限商品の購買がほとんどの年代でわずか5%にも満たない、極めて低い値であることが分かります。

図表⑤  糖質制限のビールと同発泡酒、新ジャンルの割合(点数)

ビールの糖質制限商品の価格が高めであることが、その要因の一つかもしれませんが、依然として少ない品揃えであることも影響しているはずです。糖質制限に限定せず、全ビールと全新ジャンルを対象にしたヘビーユーザーで見た場合(図表⑥A、B)、後者の新ジャンルヘビーユーザーのビールの購買の割合は2割強あり、両者の差は図表⑤ほど大きくはありません。

図表⑥  ヘビーユーザー別の新ジャンルとビールの購買点数の割合比較

ビールの支持自体が再び上がっていることを考慮すれば、糖質制限ビールの選択肢が増えることは時間の問題でしょうし、そうなれば糖質制限商品において、普段は新ジャンル、週末や休日はビールといった具合に、うまく使い分ける顧客が増える可能性も高いです。それは売り手側、買い手側の双方にとって歓迎すべきことです。

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本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。

出典:食品商業2024年6月号「200万人の顧客データが語る「こうすればもっと売れる!」第38回」

データアナリスト紹介
清原和明
1981年ダイエー入社。95年西明石店店長、98年九州SM営業本部北福岡ゾーンマネジャー、99年九州SM営業本部エリアマネジャー、2001年営業企画本部FSP推進部長、05年近畿販売本部営業部長に就任。08年消費経済研究所に出向し、常務取締役マーケティング担当就任。その後、ダイエー関東営業本部営業部長を経て、12年データコム分析推進室室長就任
掲載情報
こちらの記事は、食品商業7月号に掲載されています。
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