ユニーク顧客で市場シェアを見極める


自店の市場シェアや売上予測の把握は重要ですが、複数の競合店や販売チャネルの多様化により、従来の方法では正確な評価が難しくなっています。
商圏内での実力をより正確に把握し、売上の最大化に向けた具体的な戦略が立てられるよう、ユニーク顧客の概念と、その確保方法について解説します。

予測と市場シェアの基本

スーパーマーケットでは、商圏内にある世帯の数と、1世帯あたりの食品への支出額を掛け合わせることで、そのエリアでの最大売上を予測することができます。この予測に対して、自店の売上の割合について計算することで、自店のおおよその市場シェアが分かります。しかし、商圏内には複数の業態や競合店が存在しています。その上、昨今では販売チャネルも多様化しているため、前述の試算方法では少々乱暴かもしれません。
そこでユニーク顧客に限定して、その実力を評価する手法をご紹介します。

ユニーク顧客の重要性

ユニーク顧客に限定するのはなぜでしょうか?それは、既存店の場合は商圏内での実力がすでに明らかになっているからです。新店としてオープンして1〜2カ月ほどで、ユニーク顧客はほぼ確定します。オープン当初は、店の商圏外からの来店客も含め、興味本位で来店する人が少なくないですが、一定期間を過ぎると、再来店する顧客とそうでない顧客が明確になります。ここでは、普段の買い物に利用してくれている顧客の数を店の実力として考えます。この再来店する顧客こそユニーク顧客であり、ユニーク顧客の数が店の実力といえます。

ユニーク顧客を確保する4つの軸

ユニーク顧客になる条件は、実はあらかじめ決まっていると言っても過言ではありません。それではユニーク顧客となる4つの軸について解説します。以下のうち、1つ以上該当する顧客がユニーク顧客といえます。

①距離軸(居住地と店との距離が近い)
②時間軸(バス、電車など来店手段の利便性が良い)
③生活軸(勤務地への動線上にあるなど、生活上の関係性がある)
また、以上の3つを前提にしたものに加え、
④ディストネーション軸(その店だけの品揃えや価格などの優位性により、わざわざ行く価値がある)

もっとも、一般的なスーパーマーケットの場合、最後の軸はあくまで少数派です。最初の3つの軸がユニーク顧客となる主な条件です。もちろん、転入や転出などの商圏内の変化によるユニーク顧客の入れ替わりはありますが、人口減少や世帯数減少によって商圏の規模が縮小していくため、ユニーク顧客数自体が減少していくことを前提に商売を組み立てざるを得ません。そのため、ユニーク顧客の維持も大切ですが、1人当たりの買上金額増加を図ることが売上を伸ばしていくには極めて重要といえます。

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本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。

出典:食品商業2024年2月号「200万人の顧客データが語る「こうすればもっと売れる!」第34回」

データアナリスト紹介
清原和明
1981年ダイエー入社。95年西明石店店長、98年九州SM営業本部北福岡ゾーンマネジャー、99年九州SM営業本部エリアマネジャー、2001年営業企画本部FSP推進部長、05年近畿販売本部営業部長に就任。08年消費経済研究所に出向し、常務取締役マーケティング担当就任。その後、ダイエー関東営業本部営業部長を経て、12年データコム分析推進室室長就任
掲載情報
こちらの記事は、食品商業6月号に掲載されています。
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