ヨーロッパに学ぶ新たな食トレンド「代替製品」について【前編】

地球温暖化をはじめとする環境問題への配慮や、健康への意識向上などの背景から、世界の食トレンドは大きく様変わりしています。

今回は、昨年10月にドイツで開催された国際食品見本市「Anuga(アヌガ)」で話題となった、

ヨーロッパの食トレンドについて、データコム株式会社取締役経営推進部部長の小野寺裕貴が語ります。

 

ヨーロッパで拡大する代替製品

―アヌガでは、どんな食トレンドが話題にあがったのでしょうか。

代替乳製品、代替肉+魚、スーパーフード・グルテンフリー、非可食部の有効活用、成分・産地の透明化、脱プラスチックの6つが話に出てきました。

ここでは、特に代替乳製品、代替肉+魚、成分・産地の透明化の3つについて、詳しくご紹介したいと思います。

 

―代替製品はヨーロッパでどの程度浸透しているのでしょう。

代替乳製品の種別シェアを見ると、飲料の「ミルク(豆乳、他プラントベースミルク)」が大半を占めており、ヨーグルトやチーズはまだまだ未発展といえます。

また、代替肉はチルド品が多く、冷凍の割合はその半分にとどまっている状況です。

消費理由で見てみると、代替乳製品も代替肉も「健康的だから」というのが最多。

どちらも、健康を意識して代替製品を選んでいることが分かります。それ以降の消費理由に若干の差があり、

代替乳製品は「消化しやすいから」「砂糖の摂取を減らしたいから」といった理由が上がってきています。

対して代替肉は「環境への悪影響を減らしたいから」「動物福祉・保護に貢献したいから」などが多く、味や健康以外の活動に対しての意識が高まっている傾向です。

 

代替乳製品は豆乳よりオーツに移行

―まずは代替乳製品についてお聞きします。代替乳製品というと、日本では豆乳(ソイミルク)が真っ先に上がると思います。

日本に限らず、海外でもソイミルクは市場シェア1位の代替乳製品でした。

しかしドイツでは2016年を境に、オーツミルクが豆乳を抜いてシェア1位を取るようになりました。

さらに22年にはヨーロッパ全体でソイミルク以外の代替ミルクが、ソイミルクの5倍弱まで成長しています。

このことから、ヨーロッパで代替乳製品といえばオーツミルクであり、ソイミルクは衰退傾向にあることが分かります。

 

―オーツミルクはまだ日本では馴染みがないですね。

実はアメリカも同様で、アメリカではオーツミルクよりもアーモンドミルクの方が支持されています。

アメリカではアーモンドミルクの次にココナッツミルク、ソイミルク、その次にオーツミルクとなっています。

ソイミルクはヨーロッパ同様、支持率は高くないといえそうです。

 

―そもそもなぜソイミルクの市場がシュリンクしているのでしょう。

理由は主に3つあげられます

まず、大豆輸出大国のブラジルでは、大豆の生産にあたって、熱帯雨林を破壊しているとの報告があること。

大豆自体が、環境配慮の意識に欠けるということですね。

もう一つは、アレルギー上位品目であること。そして最後は、遺伝子組み換えであることです。

多くの大豆に取り入れられている遺伝子組み換えに対し、安全性を疑う人が多いことも要因となっています。

こうした背景から、ソイフリー、ソイレスの機運が高まり、オーツミルクやアーモンドミルクのシェアが伸びているというわけです。

 

―オーツミルクは何が受け入れられているのですか。

オーツミルクは、その他の代替ミルクと比べても環境への影響が小さいことが、受け入れられる要因の一つです。

森林伐採への影響はソイミルクやココナッツミルクよりも低いですし、生産過程における水の消費量はアーモンドミルクよりも少なくて済むといわれています。

 

―オーツミルクはメーカーもたくさんあるのでしょうか。

今はalpro(アルプロ)社とOATLY(オートリー)社の2社が、市場を席巻しています。

市場が成長し始めたタイミングでは、アルプロ社がシェア1位でしたが、年々シェアを伸ばしているのがオートリー社です。

ドイツのスーパーマーケット(SM)も見てきましたが、どのSMでもこの2社の製品が多く並んでいました。

少し、各社の特徴もご紹介したいと思います。

 

アルプロ社は、ヨーロッパ近郊で栽培した麦を使う、ローカル製造にこだわった企業です。

また、自社の考えと活動結果を消費者に訴求することに力を入れています。

食料の生産によって水やCO2をどれだけ排出しているかを伝えた上で、自社の製造がどれだけその抑制に貢献しているかを、ホームページなどで開示しています。

こうした内容はパッケージにも表記されており、製造工程や味・栄養を詳しく解説するデザインを採用しています。

飲料以外に、ヨーグルトなども製造しています。

実際に私が食べてみた率直な感想は、豆乳の味がほぼそのまま感じられ、それを隠すためか甘みが強い印象でした。

開封したときから、バニラの香りが漂うので、香りはよかったです。

 

対してオートリー社は、環境への影響を可視化することに注力しています。

マス広告などで、製造過程が及ぼす環境への悪影響を消費者に伝えることで、正しい購入判断を促そうという取り組みです。

この会社は広告がユニークで、自社の考えに賛同する同業他社に広告枠をプレゼントするという画期的な手法を採っています。

競争するのではなく、オーツミルク市場を共創しようという考えですね。

 

―代替乳製品の広がりは、ヨーロッパやアメリカが多いようです。

アジア圏は日本含め、まだまだ市場が小さいと思います。例えばタイのSMは牛乳売場が広く、代替乳製品の浸透はあまり感じられませんでした。

その中で多いのは、フレーバー付きの調整豆乳でした。

またベトナムはとにかく家畜乳製品売場が広く、代替乳製品の棚はないといってもいいほどでしたね。国によっても違いが大きいといえるでしょう。

後編はこちらから

ヨーロッパに学ぶ新たな食トレンド「代替製品」について【後編】

取締役 経営推進部部長 小野寺裕貴
取締役 経営推進部部長 小野寺裕貴
慶応義塾大学大学院卒。株式会社みずほ銀行での法人営業、
株式会社インテージでの事業開発・アライアンスを経て、データコムへ入社。
前職時より米国等のリテールトレンドの探求、発信を行っている。
掲載情報
こちらの記事は、販売革新2月号に掲載されています。
※外部サイト(Fujisan.co.jp)に遷移します。本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「販売革新」にて弊社経営推進部の小野寺裕貴が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。 出典:販売革新2023年12月号
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