美容部門の革新とドローン配送の進化。リテールメディア3.0に向かうアメリカ【NRF 2024-Retail Big Show現地特別リポート】

2024年1月14〜16日に、アメリカ・ニューヨークで開催された、世界最大の流通小売向けイベント「National Retail Federation(NRF)2024-Retail’s Big Show」。今年は約170のセッションに450人以上が登壇、1,000社以上が出展しました。世界各国から訪れた参加者は、約4万人にも及びました。

NRF2024に参加し取締役経営推進部部長の小野寺に、今年注目を集めた話題を語ってもらいました。

 

こちらの記事は続編です。前回の記事はこちらから↓

NRF 2024-Retail Big Showについて【現地からの特別リポート】

 

美容部門の革新とドローン配送の進化

―その他に、注目した話題はありましたか。

ビューティーカテゴリーの飛躍です。

美容専門店チェーンの「Ulta Beauty(アルタ・ビューティー)」CEOのデイヴ・キンベル氏は「ビューティーカテゴリーは、新しい商品・サービス・体験への飽くなき探求心があり、いち個人でも、表現の仕方は一つではなく多様であることから、非常に“Dynamic(ダイナミック)”である」と述べています。

このダイナミックなカテゴリーで、アルタ・ビューティーが提供すべきことは「品揃え×体験×イノベーション」。

品揃えについては、他の誰よりも人々の美容を理解することに注力すべく、ロイヤルティプログラムを強化した結果、会員数は4,200万人超、売上の95%を会員が作る状況となりました。また、年間2,000ブランドからの提案がありますが、ニーズに基づくと採用率は約5%程度。「美容の正解は一つではない」とし、全く異なるブランドでも、本質的な美の追求という点で同じである場合、誰でもビジネス成功の機会は平等にあると述べました。

体験の追求活動に対して、どのように貢献していけるかを常に考え続けることを重視しており、最も重要なのは5万人のスタッフによる1to1接客だとしています。それに店舗併設のサロン、パーソナライズされた自社アプリ、三つの掛け合わせで顧客体験価値を高めています。

そしてイノベーション。最も大切なことはHuman Experience(人間としての体験)であり、それをサポートするテクノロジーに対して積極的に投資を行うと発表しています。その一つがまつ毛エクステの自動化。人の手を介さず、まつ毛エクステがつけられるシステムです。またQ&Aに基づく商品レコメンデーションも、開発が進んでいます。

 

―小売業では、新たな取り組みに対する話題はありましたか。

ウォルマートが、大規模ドローン配送システムを提供する「Wing(ウィング)」社と連携したドローン宅配に関して、講演を行っていました。

ウィング社はGoogleから出資を受けており、これまでオーストラリアとカナダで実績を積んでいます。アメリカ国内では、バージニアとテキサスでの実験が完了しており、半径6マイル(約10km)以内への配送が可能としています。

これまでウォルマートは、ドローン開発会社からドローンを調達し、自社で宅配をしていました。一方、ウィング社との取り組みにおいては、購入可能先の1社としてウォルマートが名を連ねる構図となります。配達希望者は、ウィング社の専用アプリからウォルマートの商品を購入し、ドローンで自宅まで配送してもらう仕組みです。これにより、自社配送よりもライトに活用できるようになりました。

ウォルマートは全米に約4,700店を保有しており、人口の90%がウォルマートの10マイル(約16km)圏内に在住しています。ここ数年でのドローン宅配は、述べ2万人になっています。

2社連携による宅配のニーズは「最初はひやかし」と認めた上で、2回目以降は消費者自らがユースケースを理解し、進んで利用するようになると考えています。

 

アメリカではリテールメディア3.0に向かう

―リテールメディアに関しての講演についても、教えてください。

ウォルマート、「Walgreens(ウォルグリーン)」、調査会社の「Insider Intelligence(インサイダー・インテリジェンス)」による、講演がありましたのでご紹介します。

まずアメリカでは、25年にリテールメディアの広告費がTVCMの広告費を抜く勢いで成長しています。

 

 

「アマゾン」やウォルマート、ウォルグリーンも、EC、広告、メディアの三つを、会員組織を軸とした、フライホイール(ビジネスを継続し、成長させるサイクル)を回しています。3社の違いは、メディアが自社コンテンツであるかどうかです。

ここで、自社メディアを持つオンサイト広告と、他社メディアで関連表示されるオフサイト広告の違いについても解説します。

 

 

オンサイト広告は媒体規模が小さいのに対し、購買に近い瞬間を狙って広告を出すため、売上効果の可能性が大きい傾向にあります。対してオフサイト広告は、媒体規模は大きいですが、必ずしも購買に近いとは限らない関連表示のため、売上効果の可能性は中〜小になってしまいます。そのため、オフサイト広告は認知活動の一つと考えられているようです。

アメリカでは、オフサイト広告が伸びるとされています。

 

 

これまではマスメディアといればテレビだったのが、TV(というデバイス)の使われ方が、ストリーミングサービスの視聴に変化しています。

例えばウォルマートは、ストリーミングサービス「NBC Universal」と連携し、番組内で登場する商品を横に表示し、購入ができるようにしています。

 

出所:Walmart(https://corporate.walmart.com/news/2023/11/06/nbcuniversal-and-walmart-unite-to-enable-bravo-fans-to-shop-the-moment-on-peacock-for-the-first-time)

 

―アメリカのリテールメディアは、今後どう進んでいくのでしょう。

現在のアメリカは、リテールメディア2.0まで来ており、3.0に向かうと予測されています。リテールメディア1.0は、EC購買で検索すれば一致する商品が出てくるという段階で、2.0はストリーミングなどの広告から、購買につなげる段階。このアプローチで一定の効果を得たため、次はより高次なLTVの向上に取り組み始めた印象です。3.0はインストアメディアであり、顧客との接点がLTVの向上につながりファンが増えるという考え方となります。

実はこれ、日本と逆の動きで、インストアメディアは日本が得意とするもの。アメリカの小売店では、店内のディスプレーも少しずつ増えている印象です。現状では小売の思いを表示するだけにとどまっていますが、今後広告媒体としても使われていくのでしょう。

 

インタビュイー
取締役 経営推進部部長 小野寺裕貴
慶応義塾大学大学院卒。株式会社みずほ銀行での法人営業、
株式会社インテージでの事業開発・アライアンスを経て、データコムへ入社。
前職時より米国等のリテールトレンドの探求、発信を行っている。
掲載情報
こちらの記事は、販売革新4月号に掲載されています。
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