白ごはんユーザーは“おかず好き”? 惣菜売場に広がる新たな可能性

前回の記事では、惣菜売場において「白ごはん」が驚異的なリピート率を誇る主力商品であること、そしてその割にバリエーションが少ないという課題を紹介しました。今回はそこから一歩進めて、白ごはんを購入するお客さまが、実際にどんな購買行動を取っているのかをデータから読み解いていきます。一見似たように見える「白ごはん派」と「弁当派」ですが、その消費スタイルには意外な違いがあるようです。惣菜売場の提案力をさらに高めるためのヒントを探っていきましょう。

弁当と白ごはん、購買行動の違いとは?

お弁当はそれ単体で「食事として完結」する商品です。一方で、白ごはんを購入する人は、それに合わせるおかずも一緒に選ぶ傾向があると考えられます。つまり、白ごはんを買う人のほうが、おかず惣菜の購入点数が多いのではないかという仮説が立てられます。この仮説が本当かどうか、実際の購買データから見てみましょう。

データが示す「白ごはん派」の購買行動

図表②・③には、白ごはん購買者と弁当購買者の月次平均における「おかず惣菜の買上点数」が示されています(2020年実績)。
まず図表②では、白ごはんを購入した人(青)と弁当を購入した人(緑)における、それぞれの一人1回当たり買上点数を比較しています。その結果、すべての月で白ごはん購買者の方が、おかず惣菜の点数がわずかに高いという傾向が見られました。

図表2:おかず惣菜の一人1回当たり買上点数月次推移(単位:個)

図表③は、図表②同様だが、白ごはん購買者の白ごはん購買日と、弁当購買者の弁当購買日に限った、おかず惣菜の一人1回当り買上点数である。その差は、図表②に比べてより大きくなっていることがわかる。白ごはん購買者は、弁当購買者に比べて元々それが高い傾向にあり、白ごはん購買日には、更にそれが上がるということが、両図表に示されているわけだ。

続く図表③では、対象日をそれぞれの購買者の「白ごはんを購入した日」と「弁当を購入した日」に限定して、おかず惣菜の一人1回当たり買上点数を比較しました。その結果、図表②以上に明確に差が現れ、白ごはんを購入する人の方が、元々おかず惣菜を購買する傾向が強く、白ご飯購買日にはさらにその傾向が強くなることが分かりました。

図表3:おかず惣菜の一人1回当たり買上点数月次推移(単位:個)主食購入日のみ

「おかずを自由に選びたい」ニーズへの対応を

こうした結果から見えてくるのは、「白ごはんと一緒に、好きなおかずを自由に選びたい」という消費者心理です。お弁当では好みではないおかずが入っていることもありますが、白ごはんとおかずを個別に購入することで、自分好みの組み合わせを作れるという魅力があるのです。このニーズを踏まえ、前回提案したように、白ごはんに健康志向のバリエーション(雑穀米、麦ごはんなど)を加えるとともに、おかず惣菜も複数の小パックから好みのモノだけをチョイスできるような「選べる楽しさ」を重視した展開が有効ではないでしょうか。

小容量・多品種のおかずで広がる選択肢

特に「少しずついろんな味を楽しみたい」という女性や、食事量を調整したい高齢者には、少量パックのおかずを複数取り揃える売り方が有効です。スーパーの場合、メイン一品の食材に、漬物などを添えたような弁当が多くなりがちですが、頻繁に食べるには飽きやすい商品とも言えます。弁当は形が決まっている分、商品改廃の柔軟性が低いですが、惣菜であれば季節やニーズに応じて迅速な変更が可能です。売場全体の“自由度”を活かした展開を考える価値は十分にあるといえます。

まとめ

今回のデータから、白ごはんを購入する人は、弁当を購入する人に比べておかず惣菜の購買点数が多い傾向にあることが明らかになりました。これは、弁当のようにセットではなく、自分の好きなおかずを選べる自由度の高さが、白ごはん購入の魅力になっていると考えられます。

この購買行動に応える形で、少量パックのおかずを複数並べるなど、自由に組み合わせられる売り方を取り入れることは、惣菜売場の活性化につながる可能性があります。とくに「ちょっとずつ色々食べたい」ニーズを持つ女性や高齢者にとって、魅力的な売場になるでしょう。

では、お弁当はどうでしょうか。実際に、どれだけの種類の弁当がリピートされているのか。次回は、「弁当の品目数と購入傾向」について掘り下げ、新たな商品提案のヒントを探っていきます。リピートされやすい商品と、その先にある“飽き”の壁にどう向き合うべきかを考察していきます。

データアナリスト紹介
清原和明
1981年ダイエー入社。95年西明石店店長、98年九州SM営業本部北福岡ゾーンマネジャー、99年九州SM営業本部エリアマネジャー、2001年営業企画本部FSP推進部長、05年近畿販売本部営業部長に就任。08年消費経済研究所に出向し、常務取締役マーケティング担当就任。その後、ダイエー関東営業本部営業部長を経て、12年データコム分析推進室室長就任
掲載情報
こちらの記事は、食品商業2021年4月号に掲載されています。
※外部サイト(Fujisan.co.jp)に遷移します。本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。 出典:販売革新2021年4月号
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