倉庫、物流、店舗、決済の最新トレンドは?海外でのAIとIoTの活用事例についてVol.3
今回は、海外でのAIやIoTの導入がどれだけ進み、どういった活用をされているのかを解説してもらいました。物流、コミュニケーション、購買チャネルと三つの観点から、海外での活用事例をデータコム株式会社 取締役経営推進部部長の小野寺裕貴が語ります!
こちらの記事は続編となりますので、まだVol.1~2を閲覧前の方は下記よりご覧ください。
AIカメラで購買属性や興味関心を分析
購買チャネルも多様化していますが、最新の事例はありますか?
中東などでカルフールを運営するMajid Al Futtaim(マジドアルフッタイム)社が、 UAE初の無人店舗が出店しています。イメージは「Amazon GO」ですね。アプリでチェックインし、ほしい商品を選んで店舗を出るだけで決済が完了するシステムです。
そのAmazon GOは「スターバックス」と組んだ店舗を、アメリカ・ニューヨークに出店しました。スターバックスの店舗の奥にAmazon GOがあり、アプリで事前注文するドリンクと、Amazon GOにある豊富なフードを一緒に楽しめます。仕組みは通常のAmazon GOと同じため、決済がないシームレスな体験を提供します。
その他、面白い取り組みも教えてください。
アメリカのコスメ雑誌「Allure(アリューア)」が、雑誌さながらに人気・トレンドに基づいたコスメをキュレーションする実店舗を出店しています。店内での販売はせず、気になった商品はプライスタグ上のQRを読み取り、オンラインで購入する「売らない店」です。
ユニークなのは、天井にAIカメラが設置されており、どんな属性がどの商品との比較検討を行っているかなどを計測している点です。これにより、世代別のトレンドの抽出にも役立つというわけです。
同じように、売らない店の「Showfields(ショーフィールド)」は、店舗を持たないD2Cブランドに対して、期間限定でオフラインでの顧客接点を提供しました。どのような属性が関心を持ち、どれだけ立ち止まってくれているかを分析し、ブランドへフィードバックするという試みを行っていました。
NRF 2023注目トレンドは?
今年の「NRF 2023 Retail’s Big Show」にも参加されたとのことですが、今年の展示トレンドを教えてください。
倉庫、物流、店舗、決済に分け、それぞれトレンドを下記の図のように表しました。
リテールテックが貢献するのは、主に購買体験の心地よさ。捻出された余力で“企業への共感”を生むための活動に注力し、企業としての競争力を強化することが重要だと解説する企業が多い印象でした。
会場では、倉庫業務で活躍するさまざまなロボットが発表されていました。
物流では「Walmart(ウォルマート)」が、5000店規模で取り組んできた自宅向け配送の基盤を、外部中小小売などへの提供を発表。新収益の創出により、競合Amazonに対抗する動きを見せていました。
対してAmazonは、自社の物流網を活用した小規模小売向けの物流サービスを始動。
マーケットプレイス事業で培ったノウハウと、外販することでの収益確保を狙っています。
店舗では、店内外の客数・動線を捕捉するセンシング技術や、棚画像解析技術が多数展示されていました。
ただ、店内にいくつものカメラなどを設置する技術については、コストでの課題が拭えきれない状況です。
決済では、新たなスマートカートに注目が集まっていました。
これは、従来のバーコードスキャンに加え、カメラ・センシングを用いることで防犯力を強化したもの。
また、カートに設置されたモニターを用いて、顧客との1to1コミュニケーションの実現もできます。
こうしたスマートカートによるキャッシャー業務の省人化、コストの観点から画像認識以外でライト化する技術も、新たな取り組みといえるようです。