弁当は“飽き”とどう向き合うべきか?購買データから見える品揃えのヒント
これまでの記事では、「白ごはんを選ぶお客さまはおかず惣菜を多く買う」「自由に組み合わせられる惣菜提案が新しい価値を生む」といった視点から、惣菜売場の可能性を掘り下げてきました。今回は視点を変えて、「弁当」に焦点を当ててみましょう。
スーパーマーケットでは、毎月多くの人が弁当を購入していますが、実際にはどれくらいの種類の弁当が繰り返し買われているのかご存じでしょうか?リピートされる商品が多いということは強みである一方で、“飽き”というリスクもはらんでいます。
今回は購買データをもとに、弁当の品目数とリピート傾向を分析し、今後の売場づくりに活かせるヒントを探ります。
1人当たりの「弁当の品目数」はどれくらい?
スーパーマーケットで、一人当たり1ヶ月にどのくらいの種類の弁当を購入しているのでしょうか。その実態を買上点数別に分析したのが図表④です。
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図表4:弁当の買上点数別・購買者数の割合と、一人当たり買上品目数(単位:%、品目:個)
データによると、1品しか弁当を購入していない人の割合は全体の46.7%と、半数近くに及んでいます。これは今回の調査が、特定チェーンのデータのみを対象としているため、他店舗での購買履歴が反映されていない影響もあると考えられます。対象以外の買い回り実績が反映されないため、どうしても1点飲みの購買者の割合が増えてしまいます。
購買点数が多い人ほど、品目数も増える
複数の弁当を購入している顧客の傾向を詳しく見るために、図表⑤では、最大20点以上の購買者までを含めて分析しています。
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図表5:弁当の買上点数別・全て異なる品目を購買している購買者数の割合(単位:%)
基本的には、買上点数が増えるほど、購入する弁当の品目数も増加するという相関が見られます。ただし、20点に近づくほどその増加は鈍化していきます。これは、「よく買われる弁当」が繰り返し購入される、つまりリピートが発生していることを示していると考えられます。
ヘビーユーザーは約1割、でも飽きは避けられない
週1回の頻度を超える値に相当するのは、6点以上の購買者である。その割合は9.3%、ヘビーユーザーはおよそ1割という見方も出来るだろう。図表⑤は、買上点数別に、すべてが異なる品目の購買者の割合を示している。当然左端の1点の購買者は100%となる。2点購買者でおよそ3人に2人(71.3%)、3点購買者で2人にひとり(55.2%)の割合だが、週1回の頻度に相当する5点購買者においても、3.5人に1人(27.5%)の割合で、すべて異なる品目の弁当を購買していることになる。
単純な品数拡大ではなく、柔軟な提案を
この現状を「リピートが取れている」と見ることもできますが、裏を返せば「飽き」のリスクを抱えているとも言えます。どんなにお気に入りの商品でも、頻度が上がればマンネリ化してしまうのは自然なことです。そのため、弁当売場においては、定期的な商品改廃や新しい組み合わせの提案を積極的に行うことで、買上品目数の拡大を狙うべきでしょう。
とはいえ、単に弁当の種類を増やすだけでは限界があります。売場スペースや廃棄リスクを考えると、無制限な品揃え拡大は現実的ではありません。
そこで注目したいのが、前回までに紹介した「白ごはん+おかず惣菜の自由な組み合わせ提案」です。個別のおかずパックやごはんのバリエーションを取り揃えることで、限られたスペースでも多様な組み合わせを実現し、消費者の「飽き」を軽減できる可能性があります。
まとめ
今回の記事では、弁当のリピート傾向から、品目数の偏りや“飽き”のリスクに着目しました。気に入った商品であっても、頻度が上がるとどうしてもマンネリ化は避けられません。そこで重要になるのが、白ごはんとおかず惣菜を自由に組み合わせられる提案です。弁当では実現が難しい「自分だけの食事」を作る楽しさが、惣菜売場にはあります。これまでの3回の内容を通じて見えてきたのは、惣菜売場が工夫次第で大きな価値を生み出せるということ。小さな改善が、日々の食卓に新たな選択肢を生み出すきっかけになるはずです。