データ取得・分析と利活用の重要性について

今回のテーマは「購買の自動化・簡素化」。日本の小売業で起きている購買に関する課題を前提に、アメリカをはじめとする海外では購買がどう進化しているのか。

事例を交えて、データコム株式会社 取締役経営推進部部長の小野寺裕貴が語りました。

 

データ取得・分析と利活用の重要性

―現状で日本の小売業が抱えている課題を教えてください。

まず、図表①を見てください。消費者が商品を購買した際、小売業側はデータを取得、分析し、顧客との接点を持つというフローをたどります。

データはPOSレジやスマホアプリなどで得られ、各社システムを駆使して分析をしているでしょう。

しかし、その先の顧客と接点を持つということに関しては、未整備であるといえます。

顧客と接点を持つとは、分析したデータで顧客に還元することですが、そもそもデータの分析が十分にできていないが故に、そのデータを利活用できていないのが現状です。

 

―こうした日本の課題に対し、アメリカはどう進んでいるのでしょう。

アメリカでは、購買が簡素化されるとともに、ラストワンマイルコミュニケーションが円滑になっています。

 この“簡素化”には、大きく三つの種別があると考えています

①データ活用のみが進んだ状態。これは、購入や決済がアプリなどで簡素化されてはいるものの、店舗に受け取りに行くという手間がある状態です。

ECやBOPIS(Buy Online Pick-up In Store),カーブサイドピックアップなどが該当します。

②購入・決済の簡素化は追求されているが、データが紐づいていない状態。これは無人店舗や自動販売機などで、購入の手間はないものの、データの連続性がない状態です。

最後が小売業の理想形である、③購入・決済の簡素化とデータ活用が両立した状態。購買の手間をなくしつつ、

過去購買に基づく情報提供や購買前のコミュニケーションの強化で、売上に結びつけられる状態です。

 

―そもそも、なぜ顧客への情報提供が重要になっているのでしょう。

それは昨今のインフレを受け、消費者の購買がより慎重になってきているためです。

Grocery Shop 2023のデータによると、世界で74%の消費者が、生活費の高騰に対し懸念を抱いているとの結果が出ています。

生活費を抑えるために、36%の人が「より安価な商品」を買っており、33%の人が「格安店での購入」を選択、

さらに25%の人が「贅沢を抑えて必需品を優先」する行動をとっています。

 

―安い方を検討する動きが活発化しているということですね。

そうですね。その一方で、商品にこだわる人も増えています。

これは、世界で約25%の人が「サステナブルな商品やパッケージに対して、通常よりも多くのコストを支払う意味がある」と回答していることからも見えてきます。

こうした消費者が気にすることは、どこで作られているか、どんなプロセスで作られているか、社会や環境にどんな影響を与えているかということです。

つまり、情報提供は消費者の購買の意思決定に左右するといえるでしょう。

 

―世代によっても、そうした情報を収集する方法に差がありそうです。

アメリカの「新商品に関する情報をどこから収集するか」という調査では、Z世代ほどSNSでの情報収集が高く、

40代前半〜60代前半までは店舗の棚で情報を取得していることが分かっています

いい棚をつくることも大事ですが、次の消費の主体となるZ世代に合わせた情報提供を検討することも重要だと思います。

 

アメリカの小売企業はデータマネタイズを強化

―先ほど挙げていただいた、三つの種別について詳しく教えてください。

まず①データ活用のみが進んだ状態。アメリカの小売企業のネットショッピングに対する対応は、日本と比べ物にならないほど進んでいます。

また「Walmart(ウォルマート)」や「Kroger(クローガー)」など、どの小売りチェーンでも、

トップ画面の表示は「商品検索」「宅配orピックアップの選択」「バナー広告」という構成になっています

シンプルで使い勝手のよいインターフェースで、スマートな購買を提案しているといえるでしょう。

また、小売大手各社はリテールメディア専業の会社を立ち上げています。

アメリカのリテールメディナの成長は著しく、各社ともにデータマネタイズを強化しているようです。

―BOPISやカーブサイドピックアップは、定着したのでしょうか。

カーブサイドピックアップは、インフラとして定着していますね。アメリカのディスカウントストア「Target(ターゲット)」では、

店内の至るところに商品をピックアップするスタッフがいました。

また、ピックアップされた商品は入り口すぐ左の専用エリアにストックされます。顧客は駐車場に到着したら電話をかけ、車内で受け取る仕組みです。

こうした取り組みは「Amazon Fresh」や「WHOLE FOODS MARKET(ホールフーズマーケット)」でも見かけました。

各社ともに、受け取る顧客専用の駐車場が店舗近くにありましたが、駐車しているのは2〜3台といったところで、空きも目立っていました。

これは、受け取りついでに買物をしようという人が多いためと思われます。

―データ活用とはちょっと違いますが、店頭サイネージはアメリカでも見かけますか。

いいえ、アメリカでは店頭サイネージはほとんど活用されていません。サイネージは東南アジアで浸透しています。

きらびやか、華やかな装飾を好む東南アジアの国民性と相性がいいのかもしれませんね。メーカー各社の什器とセットになっているサイネージが多い印象です。

ただ店頭への導入は進んでいますが、画質が悪かったり、停止していたりと、運用に課題はありそうでした。

 

執筆者紹介
取締役 経営推進部部長 小野寺裕貴
慶応義塾大学大学院卒。株式会社みずほ銀行での法人営業、
株式会社インテージでの事業開発・アライアンスを経て、データコムへ入社。
前職時より米国等のリテールトレンドの探求、発信を行っている。
掲載情報
こちらの記事は、販売革新1月号に掲載されています。
※外部サイト(Fujisan.co.jp)に遷移します。本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「販売革新」にて弊社経営推進部の小野寺裕貴が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。 出典:販売革新2023年12月号
販売革新を購読する