ふたつの新店に見る白菜の小分け度

8分の1カットの白菜が品揃えとして必要な理由は?

図①玉売りとカット売り野菜 年代別支持比較グラフ

例えばキャベツなら一玉、1/2、1/4カットの3種のサイズ、大根なら1本、1/2サイズ、1/4の3種といった具合に、どこのスーパーでもカットした小分け野菜を併売している。商売として当たり前の話である。しかしカットして販売する単位は、1/4までがほとんでそれ以上の小分けはほとんどない。同じ一玉でも白菜とレタスでは大きさが随分異なるものだが、どこまで小分けにすべきかその判断基準はどこにあるのだろうか。

2013年9月にオープンした某関東スーパーAの新店、その翌月にオープンした大手チェーンストアBの新店、両新店のいずれにおいても1/8カットの白菜が品揃えされている。何故1/8カットの品揃えが必要なのか。白菜が他の玉売りの野菜に比べて大きいためだろうが、図表①を見ていただきたい。

年代別の支持の強弱を表した折れ線グラフである。ここで注目して欲しい点は、U字型を描く曲線とそうでない曲線の二つのパターンがあるということだ。ここに挙げた事例に共通していることは、小分けが進めば、いずれもU字型に近い曲線を示すということである。キャベツしかり、レタスしかり、そして大根もしかり。いずれも1/2カット、1/4カットでU字型曲線になっている。しかし白菜だけは違う。1/8カットで初めてU字型の曲線になるのだ。

U字型の曲線は、年代がより若くなる、もしくはより高齢になるほど支持が高くなることを表しており、それが意味するものは、小容量しか必要ない顧客、すなわちひとり暮らしの学生、OLや、少量で充分な高齢者等に支持があるということである。白菜の場合、1/4カットでU字型にならないのは、それが使い切れる量ではないということを、感覚だけでなくデータが示しているということである。

 

 

小分けの最小単位は使い切れる量か否かで考える

白菜の事例から見えてくることは、小分けの必要最小単位は、使い切れる量にあるか否かということだ。
その視点で他の事例をひとつ。もやしである。もやしは、通常200gで販売されている商品が多い。それよりも多い容量はあるが、それ以下はあまりみかけない。
では200gのもやしは使い切れる量として最小単位なのか。料理にもよるが答えはノーだ。もともともやしは単価がかなり低い商品であり、200gより少ない容量の商品を敢えて作り単価を落とす必要はないという売り手側の判断が優先されているからだろう。しかし、傷みが早いもやしのような野菜こそ使い切りの容量が必要なのではないか。その発想がスーパーには乏しいように思われる。
ところが、某関東スーパーCの数店舗で、100gのもやしが販売されているのを見つけた。150gを使い切りサイズとして販売しているスーパーもあったが、100gは知る限りでの最少の容量である。

もったいないと言う言葉が海外でも注目された時期があったが、エコへの取り組みを標榜する小売りが多い中、使い切れる量か否かを基準に置いて、各商品の容量について再考していくこともエコのひとつだと考えるがいかがだろうか。そんな商品は、野菜以外にもたくさんあるはずだし、そのひとつひとつをつぶしていくことが顧客の支持につながるはずである。

ゴンドラの最上段に小容量の缶ビールを配置すべきではない、その理由とは?

通常、ビールの小容量缶(135ml)はゴンドラ、あるいは冷多段ケースの最上段に品揃えされている。しかし、スーパーCの新店では、6段のゴンドラ冷ケースの4段目、5段目(最下段は瓶ビール)にそれが配置されているのだ。シニアの視点から見て、まことに理にかなったものである。何故か。図表②を見ていただきたい。ビールの単品別の年代別支持を示したグラフである。

図②ビール(国産)の年代別支持(売数上位品目)

注目すべき点は他と比べて突出した右肩上がりを示している3品目であり、その共通点が小容量缶だという点である。このようにシニアの支持が強い商品の場合は、当然高齢の女性の購買を想定する必要があり、ゴンドラの最上段では(転び止めが付いていれば尚更)商品が取りづらく不便を強いることになることは想像に難くない。

スーパーCの新店以外においても、スーパーAの新店(2013年9月オープン)、某関東スーパーDなど、最上段が定位置であった小容量のビールを、敢えて中段以下へ配置する店が最近少しずつ増えてきたように思う。これには、小売り側だけでなく、例えばアサヒビールの営業部隊が、小容量の缶ビールを中段以下に配置する棚割りを、小売り側へ提案しているようなことも影響しているのかも知れない。とすれば、目を向けている相手は、小売り、メーカー(あるいは卸し)ともに同じ店の顧客だということになる。その共通の顧客に対して、小売りとメーカーが一体となって顧客満足度の向上に取り組んでいるという実に歓迎すべき傾向だと思うのだがいかがだろうか。

 

本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載していた内容を一部編集したものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。
出典:食品商業2014年3月号「商売上手を科学する~シニア層への商売上手を科学する~」