年代別支持において着目すべき異端児商品とは?
前回の記事までは、カテゴリー毎に年代別の支持率を確認してきました。商品単位で見る時も確認方法は同様です。
該当商品が属するカテゴリーの平均値に対して、大きく異なるパターンを示す商品や商品グループに着目するというやり方です。
そのような他と異なる傾向を持つ商品を、異端児商品、異端児グループと呼んでいきます。
異端児商品は価格、規格(容量、販売単位など)、素材・原料、嗜好・テイスト、特定要素(健康嗜好など)、品質など、他とは異なる特性や要素を持った商品がなることが多いです。
今回の記事では、そんな異端児商品の例をご紹介します。
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異端児商品を見つける際の注意
まず、異端児商品を確認する上で注意すべきことは、一品一品の商品に着目する際、いかに異端児商品といっても、売数が著しく少ない商品は、予め除外しておくことです。
なぜかというと、そういった商品は売り方などに問題がある可能性もありますが、概ね顧客の支持が低いと評価される場合が多いからです。ですので、売数が著しく少ない商品を拡大しても、年代別支持率に変化をもたらし、売上増加につながるとは考えにくいです。
そこで、確認の仕方として、ABC分析の考えに基づき、最も重要とされるAに該当する商品に絞り込んだうえで、その中にある異端児商品だけを評価するという方法があります。
そうすれば、A商品の中の異端児商品と同系統の商品を、もっと品揃えすべきと判断した際に、ABC分析のCに該当する商品のいずれかと、その商品を差し替えればいいということになります。異端児商品を導入していくことによって、それらが属するカテゴリー利用者の年代別の間口が徐々に広がっていきます。
その効果検証として、5.1分類で定期的なチェックが必要になるわけです。
さまざまなタイプの異端児商品が年代別の間口を広げるキーになる!
ここからは様々なサブカテゴリ―で年代別支持率を確認した事例を見ていきます。
NBとPBでの年代別支持率の違い
まずはオリーブオイルを見ていきます。
どちらもエクストラバージンで同量の商品ですが、プライベートブランド(PB)とナショナルブランド(NB)の違いがあります。
グラフを見ると、典型的な真逆の傾向を示すX字型になっていることが分かります。
以前の記事でも取り上げましたが、これはPBが若年層、NBが高齢層という風に互いに支持率が低い年代を保管しあうことで、全年代をカバーしている事例であり、PBの存在意義を示す典型的なパターンです。
ツナ缶のPB、NBを比較した際も同様のX型のグラフになりました。
オリーブオイルもツナ缶も共に、シニア支持型のNB商品の若年層の支持率をあげずとも、ヤング支持型のPBを品揃えすれば、両社の平均値で全年代からの支持が得られることを示した事例になっています。
商品の年代別支持の傾向の変更を試みるのではなく、カテゴリーとして全年代からの支持を得ることを目指すことで目的を達成できるのではないでしょうか。
商品オリジナルの特性による年代別支持率の違い
同様の見方で確認していくと、異端児商品には、いくつかのパターンがあることが分かります。
冷凍チャーハンの事例では、カテゴリーの平均と同じ年代別の支持型になるものの、さらにその傾向が突出した異端児商品を見ていきます。
冷凍米飯のサブカテゴリ―として、冷凍チャーハンをグルーピングすると、その平均値は左肩上がりのヤング支持型になりますが、ビビンバチャーハンだけが、特に20代、30代が突出して支持率が高い異端児商品となります。
同様に魚肉ソーセージでは、60代、70代中心に支持が厚いシニア支持型のグラフになりますが、DHA強化を謳う商品は、さらに突出してシニアが支持している異端児商品と言えます。
これらの事例ではビビンバチャーハンはテイスト、DHA強化の魚肉ソーセージでは健康志向といったように商品オリジナルの特性が、異端児商品となる要因でしょう。このような傾向から、同じような特徴を持つ商品であれば、他のカテゴリーでも、同様の年代から支持を得る可能性が高いと推測できます。つまり、偏った年代別支持を是正する際の参考になるということです。
同様の事例では、日配の練り物かまぼこをサブカテゴリ―としてグルーピングするとシニア支持型になりますが、カニかま、笹かまが平均値に近い中、チーズかまぼこだけが40代~60代の支持が高く、ファミリー支持型の異端児商品になります。
また、キムチと漬物を比較した事例でもテイストの違いによって、ヤングがキムチを支持し、シニアが漬物を支持するというようにが真逆になっているパターンがありました。
このパターンの事例が最も異端児の印象が強いです。
若い世代が支持するビールの異端児
最後に、ビールと新ジャンル・発泡酒について触れておきます。
かなり以前に調査した際には、ビールがシニア支持型で、発砲者はヤング支持型という結果でした。5年前には、その支持の差が小さくなっていましたが、近年では以前とは真逆で、ビールがヤング、発泡酒がシニア支持型に変化しています。
若者の酒離れや、取り敢えず最初のビールという飲み方の薄れがよく指摘されますが、あまり量を飲まない若者にとっては、たまに飲むのであれば、新ジャンルではなくビールを選択することが定番になりつつあるのかも知れません。
実は家計調査にも、その変化を裏付ける実態が見て取れます。
ちなみに、このビールカテゴリーにおける異端児商品は、以前からずっと異端児であり続けている極小容量のビールです。ビールの平均と135ml缶を比較すると、いかにシニアの支持が抜きんでて高いか分かるはずです。
もちろん135ml感はABC分析のAの中位以上に属しているのだが、高齢層の購買がそれほど高いだけに、取りやすいようにゴンドラの適度な高さでの陳列が必要になります。
最後にビールと比較した際の一部のクラフトビールについても、若い世代の支持が突出した異端児商品になるという結果がありました。
これからの時代は「たかが年代、されど年代」
人口減の時代には、出来る限り購買者の年代の間口を広げることが有利になります。5.1分類を通して、異端児商品に目を向ければ、年代別支持率の偏りを是正するために、どんな商品をに新たに品揃えすべきか、そのヒントがいくらでも見つかるはずです。
しかし、自社、自店の顧客の年代別構成比がわからないとしたら、この先益々荒れることが予測されている海原を、羅針盤のない舟で進むようなことにならないでしょうか。年代別のデータに関心がない、必要がないと思われている人も、そろそろ関心を向けるべき時期に来ているはずです。たかが年代と思われがちですが、されど益々年代なのです。
顧客データ分析ソフト「Customer Journal」とは?
Customer Journalは、顧客の変化を「見える化」できるシステムです。
個店ごと・顧客ごとの購買状況を分析でき、購買金額の変化が分かります。
また、商品の支持年代層やリピート・同時購買といった購買傾向も分かるため、商品の特性を把握することもできます。
会員の住所情報と購買情報を組み合わせ、商圏の購買力の分析なども可能ですので、
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本記事は、スーパーマーケット専門情報誌「食品商業」にて弊社分析推進室の清原和明が連載しているものであり、株式会社アール・アイ・シー社の承認の上掲載しています。
出典:食品商業2024年3月号「200万人の顧客データが語る「こうすればもっと売れる!」第35回」